うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー (1984)
4.4/5.0
80〜90年代の押井守氏のアニメーション作品にはどれも神がかり的な凄みがあると思っているけれど、この作品も間違いなくそのひとつだなと感銘を受けた。
原作者が納得しなかったとかこれは自分のうる星やつらとは別物ですねと鑑賞後にコメントしたという逸話があり、原作準拠と創作的飛躍における乖離の問題に起因した昨今の痛ましい事件に少し思いが及んだけれど、ここまで明確に提示したい物語があって隙なく作られた作品には、素晴らしいと思わざるを得ない。
押井守氏の創作物はこの作品を含め基本的に、原作の物語的な骨格や登場人物の性格と行動原理を軸にしながら、古典小説や哲学者の言葉、果ては聖書等からの膨大な引用を組み合わせ、脚本を大きく飛躍させて構成するものがほとんどだ。
その借景的・再編集的な構成力の比類なき高さと、なおかつ賢しげで軽薄なパロディやオマージュにとどまらず個人の強烈なオリジナリティを確立できることこそが、押井守氏が持つ作家性なのだろうと思う。