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Cinema Review

アグリーズ | Uglies (2024)



2.1/5.0

「チャーリーズ・エンジェル」や「ターミネーター4」を手掛けたマックG監督によるNETFLIXオリジナルのSF映画で、英語圏の文学カテゴリでいうところのYA = ヤングアダルト (12〜18歳) 層をターゲットに書かれた小説を原作としており、主人公やその周辺の登場人物達もYA世代という設定。


世界規模の破滅的な戦争を経て、他者への優越感や劣等感といった思考を抱くことが人類の争いの原因であったという結論のもと、16歳になると強制的に究極的な外見を手に入れる整形手術を受けることで、人類は平等な世界を実現した… という、ユートピアなのかディストピアなのか微妙な未来世界が舞台となっている。

優れたSFはその寓話的な物語を通して現代社会の問題を批評的に描写するものだが、この映画の原作者が着目したテーマは明らかに、若者達を取り巻くルッキズムの問題であると分かる。


「アグリーズ (Uglies)」とは見た目が醜いもの達 = 整形手術を受ける前の主人公達と思わせておきつつ、真に醜悪な存在とは人々の思考を (見えないところで) 支配している者達なのではないか、という作者の主張とツイストのあるタイトルなのだろう。


外見の完璧さだけが本当に重要なのか? その基準に達するためだけに他の色々を犠牲にするような人生や社会に、真の心の自由は存在するのか? といった問題について、若者達だけでなく社会全体で考えることには価値があるとは思う。

が、この映画においては、その寓話化のレベルが少し稚拙というか、ちぐはぐな印象をおぼえてしまった。


SF的設定の細かい粗をつつくときりが無いので控えるが、避けがたいほど致命的な映画作劇上の問題だと感じた部分が1点だけ。

整形手術を受ける前の主人公やその友人達が自分達の外見を「寄り目」や「デカ鼻」等とやたらに卑下するのだが、主人公を演じたジョーイ・キングも、その恋人役のチェイス・ストークスや友人役のブリアンヌ・チューも、私のような一般人からすれば素晴らしく整った美しい顔立ちと魅力のある俳優達なので、整形手術を受けて完璧にならなきゃ… というキャラクター達の動機の説得力が全く感じられなかった。

また、映画の中盤からは整形手術を拒否し独自のコミュニティに生きる人々も登場するのだが、そのリーダー格の青年の外見もまた非の打ち所がないほどの精悍さで、それだけ外見に恵まれて生まれれば手術を受ける生き方を選ぶはずがないよね… と興ざめだった。

かといって、外見に明らかな不備やハンデを持つ俳優だけをわざわざオーディションで招集し選び抜くということもビジネスとして難しかっただろう。

映画の物語の中というより、その製作の過程や裏側にこそ、この作品が描きたかったであろうルッキズム問題の闇が大きく横たわっていたのではないか。


あからさまに続篇ありきで中途半端な終劇も含め、もやもやな読後感が強く残る作品だった。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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