隔たる世界の2人 | Two Distant Strangers (2020)
4.3/5.0
人類がいつか乗り越えなければいけない人種差別問題について、理想とはほど遠い現状を鑑賞者に叩きつけ、これが私達がいま生きている世界なんだと訴えかけてくる映画だった。
主人公に痛ましい結末が訪れる度に時間が巻き戻されるという設定を用いながら、その設定自体が、毎日のようにどこかでこのような悲劇が繰り返されているのだという事実の隠喩と解釈することもできる。
目には目をで武力を用いて闘争するのではなく、自身に憎しみを向けてくる相手とも対話をすることで悲劇からの脱却をはかろうとする主人公の気高い精神に、心を打たれる。
そして、その精神すら踏みにじられるほどの圧倒的な暴力もまた世の中に数多く存在しているという事実の恐ろしさにも、気付かされる。
主人公と相対する警官の内面と良心が、主人公の懸命な努力によって現出してきたのではと期待した先にあった終盤の衝撃的な展開には、時にその理由の解釈すら難しいほどの邪悪が我々の “隣人” として存在している可能性もあるのだと思わされた。
それでも私達は諦めずに対話をし続け、互いのコンテクストを想像し続け、相互理解する努力を続けなければいけない。
あの時代の自分達は愚かだったと誰もが (あらゆる人種と国籍の人間が) 言えるようになる時まで、その努力を放棄していはいけないのだと、心にしっかり受け止めた。