まったく同じ3人の他人 | Three Identical Strangers (2018)
4.4/5.0
アメリカで実際に起きた前代未聞の事件について、当事者や関係者達の証言と実際に記録として残る写真やビデオを組み合わせる形で語られていくドキュメンタリー作品。
ある男性がとあるきっかけで出会うことになる人物が自分にそっくりで、その仕草や癖はおろか生年月日までも一致していたというだけでも相当な驚きだが、なんとそのニュースを見て連絡してきたもう1人の男性もまた2人にそっくりで、実は3人とも生後すぐにそれぞれ違う家庭へ引き取られた養子だった… という、にわかには信じられないような導入。
3人の男性はその愛嬌あるキャラクターもあってテレビ番組等で脚光を浴び、映画にも出演し、共同経営をはじめたお店も人気を博すが、やがてその奇跡的な出会いと彼らの数奇な運命の裏には、おぞましい真実が潜んでいたことが分かってくる。
フィクションであっても恐怖を感じるような筋書きが、現実に実行されていたという事実の恐ろしさに圧倒されてしまった。
何といっても、このドキュメンタリーで語られることは全て当事者達の証言に基づく事実なのだという大前提がありながらも、それを提示する順序や構成・編集の巧みさや、当事者達の表情の変化や呼吸の捉え方に関する演出の見事さに驚かされる。
過剰に感情的なデコレートをするでもなく、淡々と突き放すでもなく、被写体や事実との絶妙な距離感が抑制的に保たれた演出が素晴らしい。
それでいて、製作者達が秘めた静かな怒りと巻き込まれた人々への寄り添いの姿勢が、事実という重量を背負った映像を通して強く伝わってくる。
人間の人生とは、遺伝子に基づいて先天的に運命づけられた行動と結果から逃れられないものなのか?
それとも、後天的に与えられた環境や他者からの影響を受けながら、自分や自分達で作りあげていけるものなのか?
人生を侮辱され、翻弄された3人の男性の生き様を通して、人の命がいかに重いものであるか、それを軽率に扱うことがどれほど許しがたい悪行であるかが確かに描かれていた、秀逸なドキュメンタリー映画だった。