探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 (2013)
3.9/5.0
自分が北海道出身で札幌にも住んでいたことがあり、1作目がなかなか心に残ったのでこちらの2作目も観賞した。
ジャンルは前作に続いての探偵もので、主人公のモノローグが要所で挟まれる形のハードボイルドなトーンで演出されている。
シリアスとコメディが目まぐるしく切り替わるスタイルも前作から踏襲されているが、こちらの2作目の方が、前作から引き続き登場する主要キャラクター達の演技がより板についており、作劇として安定しているように感じる。
割と大掛かりなアクションを含むドタバタなシーンにもちょっと間の抜けた面白さがあるけれど、やはりハリウッド映画や韓国映画のように研ぎ澄まされた構図設計やリアリティがあるものではなく、そこを真面目に比較するとコント的に見えてしまうところはある。
脚本は1作目と打って変わってということではなく、規模感や展開も前作同様といったところだけれど、無闇にスケールアップして変な方向に行くよりは、順当な続篇として成功しているように感じる。
もしかしたら原作小説の内容に準拠しているのかも知れないが、中盤〜終盤にかけて賛否が分かれそうな政治的イデオロギーについての文脈が入ってきたところは、脚本の根底に大きく関係する部分ではないこともあり、この映画に取り入れる必然性は強くなかったのではないかと感じてしまった。
探偵が真相解明のために奔走する今作の事件の首謀者が明らかになるシーンでは、その意外性についての驚きもありながら、何よりも人間の器の小ささや他者と理解し合えないことの惨めさについて考えさせられる部分があった。
主演の大泉洋はキャラクターをしっかり自分のものにしていて、現実に即して見ればリアリティレベルが高くないこの映画の中においても、こういう人間がもしかしたらススキノでひとりぐらいは (まだ) 生きているかも知れないと思わせるような説得力がある。
その相棒役の松田龍平のふわふわ、ヘラヘラなキャラクターは前作と変わらずで、その唯一無二ともいえる存在感が面白い。
ヒロイン的な役を演じる尾野真千子の演技からは、前作の同ポジションを演じていた小雪とは格が違うと感じるほどの、俳優としての凄みを感じた。
多くの人間の内面には複層的な心情の折り重なりがあるものだが、表情や声、オーバーアクトではない微細な振る舞いでその複雑さを表現しており、劇中では語られない物語の奥行きについての想像が広がる。
日本においては最高レベルといっても間違いではないほどの素晴らしい俳優であることを再確認した。
ススキノが中心的な舞台でありながら、2作目の今作では室蘭市の風景も叙情的に描かれており、自分がかつて過ごした街と思い出が呼び起こされ、ノスタルジックに語られる映画終盤の物語と重ね合わせてしまい、涙ぐんでしまうシーンが何度もあった。
楽しいことよりもむごいことの方が多い時と場所に生まれたとしても、人は支え合うことで小さな幸せを積み重ねていくことができるのだというメッセージを受け取った。