REBEL MOON - パート2: ディレクターズカット | Rebel Moon - Part Two: Director's Cut (2024)
2.7/5.0
ザック・スナイダーの脚本・監督による壮大なスペースオペラ二部作の完全版で、その後篇。
オリジナル版は約2時間 (123分) だが、このディレクターズカットは約3時間 (173分) 。
作品そのものの評価はさておき、監督が語りたい物語が隅々まで具現化された映画であることは間違いない。
前篇・後篇ともに、もともとは「スター・ウォーズ」の完全新作として構想されながら、結果的に監督オリジナル作品として脚本を構成し製作された作品という経緯があり、この物語が「スター・ウォーズ」の世界観で作られたらどんな感じになったのだろうと想像しながら観賞する楽しさはある。
オリジナル版とディレクターズカットの大きな違いは、前篇においてはキャラクターのバックストーリーを掘り下げて理解できる新規シーンの追加が主だったが、後篇ではオリジナル版にあったシーンをベースにしながら、じっくり時間をかけて分厚く見せる編集が多くなっている。
自身がザック・スナイダー監督作品のファンであるからなのかも知れないが、オリジナル版を観賞した際に、この作品には少なくとも4つ明らかに失敗しているところがあると感じ、ディレクターズカットの観賞後にその思いを強くした。
1. 前篇で済ませたはずのキャラクターのバックストーリー紹介 (回想シーン) が何故か繰り返される
かなりのボリュームを費やして、前篇で語られたこととほぼ同じ内容が冗長に語られる。
しかも主要キャラクター全員分の回想が続くので、それが終わるまで物語が全く前に進まない。
2. 悪役が前篇と全く同一人物なのでスケールの変化も打倒のカタルシスも感じられない
前篇の悪役は、序章で倒されるべきキャラクターとしてはちょうどいい設定のように感じたが、前篇で死亡したと思われていたそのキャラクターが早々に (正確には前篇の終劇直前で) 復活し、後篇でも全く同じ役回りで登場する。
同じ悪役を二度打ち倒しても、主人公たちの物語が前進したり、闘いが終結したのだという感動がない…
3. 監督の専売特許ともいえるハイスピード撮影 (スローモーション演出) の使いどころが何だかおかしい
これまでのザック・スナイダー監督の作品では、ここぞ! というところで、やっぱりこれだよね! というハイスピード+コマ落としのケレン味溢れる演出が観られて毎回驚きと感動があったのだが、この作品では、そんなフツーの風景を超ハイスピードで見せられましても… と困惑・退屈してしまうようなシーンが少なからずあり、監督の意図が理解できなかった。
4. そもそも二部作で完結する物語ではないことが終盤で唐突に明らかになる
オリジナル版でも前・後篇あわせて約4時間半、ディレクターズカットにおいては約6時間半と、ひとつの物語を語るには充分過ぎる超特大ボリュームでありながら、打ち切り漫画の最終回さながらに「俺達の本当の闘いはこれからだ」形式のクリフハンガーがあって終劇する。
騙されたとまでは言わないまでも、ここまで饒舌に語った挙げ句どこまで引っ張るつもりですかという気分になってしまう人が、少なくないのではないか。
優れた漫画作品には漫画家だけでなく編集者の存在もまた重要だと言われたり、音楽アーティストとプロデューサーの関係の重要性等もよく言われるが、映画作品においても同様のことが言えるのかも知れない。
映画作品そのものの強さよりもリスクヘッジを優先し、関係者各位の利害や配慮も入るから作品が駄目になる原因なのだといわれる「製作委員会」方式については、自分もいち映画ファンとして全く快く思っていないが、この映画はもしかしたら、NETFLIXがザック・スナイダー監督を信用して予算を出したものの、監督個人の趣味や嗜好が暴走してしまい、それを冷静にハンドリングできる存在が監督の隣にいない現場になっていたのではないか… と、映画世界の外の事情を想像してしまって、少し悲しい気持ちになった。
今作の製作にクレジットされていて、ザック・スナイダー監督のパートナーでもあるデボラ・スナイダーには、次回作から監督の手綱を強めに握ってくれることを期待したい。