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Cinema Review

MEN 同じ顔の男たち | MEN (2022)




2.0/5.0

アレックス・ガーランド監督の、全てを説明してしまわず鑑賞者に想像の余白を残す作風には強い作家性があり稀有な存在だなと思いながらも、この作品は個人的にはあまり面白いと思えず、少し残念だった。


序盤から中盤頃までの、不気味な構図やレイアウトを巧みに用いたにじり寄るような不穏な恐怖の描き方には凄みがあって、単純なジャンプスケアに頼らないハイレベルな演出だなと感じていたが、終盤はその良さをかき消してしまいかねないぐらいの安直なジャンプスケアや、不快感を残すこと以外に存在意義が分からないようなグロテスクな描写が多く、前半と後半でまるで別の映画のようだった。


脚本をストレートに解釈すれば、トラウマ的な経験をしてしまった女性の主人公が払拭できない異性嫌悪の可視化ということなのかなと思うが、主人公以外の登場人物達 (MEN) の役割がそこに終始しているというか、そこ以外に機能していないように感じた。


終盤で描かれる超展開 (相当にグロいし率直に不快) には唖然としてしまったが、それは主人公が陥っているいわば精神的で輪廻的な煉獄の可視化なのだと解釈するならば、その舞台や人物たちが果たして実像なのか、虚像なのか、あのモチーフは何だったのかといった表層的な部分を考察する意義はあまりないのだろうとも思う。

何より、全篇を通しての主人公の心理の変化というかキャラクターアークがほとんどないため、主人公のどの部分に共感しどういった読後感を持ち帰ればいいのかが分からない。


アレックス・ガーランド監督と似た作風のクリエイターとして、デヴィッド・リンチを想起する映画ファンも少なからずいるのかなと思った。

不条理かつ神秘性があって想像の余地を残す脚本や、スクリーンを越えて襲ってくるかのような恐怖の卓越した演出という意味では共通する部分もあるが、個人的には、デヴィッド・リンチ監督の作品の方がより人間の根源的な恐怖や感情の機微を描くことに成功しているなと思う。

アレックス・ガーランド監督の作風と自分の感性は、あまり相性が良くないのかも知れない。

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Auther:

Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

映画やドラマを観ている時間が幸せ

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