猿の惑星 / キングダム | Kingdom of the Planet of the Apes (2024)
3.6/5.0
ルパート・ワイアットやマット・リーヴスが監督を担ったリブートシリーズの3部作がとても面白かったので、その続篇かつ新シリーズの1作目となる今作を期待半分、不安半分で観賞した。
鑑賞前に気になっていた点は監督の交代で、前シリーズにあった重量感と外連味が両立するハイレベルな画づくりを、今作を監督したウェス・ボールが引き継げているだろうか? という心配があったが、シリーズの持ち味は引き継ぎつつ、過去作の繰り返しにとどまらない斬新さや驚きのある画づくりもあって、新シリーズ開幕にあたっての世界観の提示に成功していたように感じた。
特に、リブートシリーズよりもさらに遡ったオリジナルシリーズの、1作目 (1968年) や2作目 (1970年) における新世界の描き方へのリスペクトが分かるダイナミックな画づくりには感心した。
高い知能と言語能力を得た猿達が地上を支配し、文明や言語を失った人類が下等生物として虐げられているという設定に、昨今のVFXの映画的表現技術が追いついてきたこともあって、あらためてそれを目の当たりにするとなかなか衝撃的で驚きがある。
人類文明の終焉から数百年が経過し、荒廃が進んで自然とほぼ同質化したその廃墟の描かれ方も、それらを捉えるそれぞれのショットのアングルやサイズも含めてアーティスティックで新鮮。
単に画として面白いだけではなく、その前文明の構造物と遺産が、猿達の住居をはじめとする新文明の拠りどころになっているという点にも、このシリーズ独特のセンス・オブ・ワンダーを感じてグッときた。
脚本の展開は期待していた内容にほぼ収まっていたが、主人公を中心に様々なキャラクターが登場しながらも、物語を大きく動かす人物 (ほとんどは猿だけど) の数が必要最小限に絞られていて、視点と舞台がコンパクトかつシンプルにまとまっており、分かりやすい。
単作品としてきちんと起承転結がありながら、次回作はどんな物語が展開するのだろうと期待が大きくなるフックも終盤にあり、新シリーズの1作目として誠実かつ丁寧に作られている作品だなと好感がもてた。
ウェス・ボール監督は「ゼルダの伝説」の実写化作品も手掛けると発表があったが、この作品をそういう周辺情報も込みで観賞すると、確かに監督が得意なジャンルなのかもしれないなと感じた。
良くも悪くも手堅くまとめるのが上手で、脱線したり冒険し過ぎず安定的な作風なので、重要なタイトルの映画化を託す任天堂としても不安が少なそう。