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Cinema Review

マッドマックス: フュリオサ | Furiosa: A Mad Max Saga (2024)



4.3/5.0

オーストラリア出身のジョージ・ミラー監督が手掛ける伝説的映画シリーズの1篇で、アカデミー賞にて大旋風を巻き起こし多数受賞した「マッドマックス 怒りのデス・ロード (2016)」の前日譚に位置する作品。


前作「怒りのデス・ロード」で目の当たりにした圧倒的過ぎる世界と物語の観賞記憶が強く残っていることもあり、前作を比較しながらの観賞がどうしても避けられなかったが、前作に匹敵するほどの衝撃は感じられなかったものの、続篇としても、前日譚としても、単独の映画としても、高い完成度を誇る作品だと感じた。


主人公のフュリオサを演じる俳優は、前作のシャーリーズ・セロンからアニャ・テイラー=ジョイに代わっているが、外見が似ている / 似ていないといった表層的な部分ではなく、キャラクターの実在感や凄みといった本質の部分が継承されており、主演俳優としてしっかり映画の軸になっていた。

今作で主人公の宿敵として新登場するディメンタスを演じたクリス・ヘムズワースは、新世界における超常的な存在 (カリスマ) になることへの渇望がありながらもそうなり切れない惨めさがあり、崩壊前の世界への未練も捨てきれないという、複雑かつ不安定なキャラクターを演じており、退廃した世界で人間がまともに生き続けることがいかに難しいかが素晴らしい演技で体現されていた。

前作から再登場となる悪役キャラクター達も、演じていた俳優達の逝去等もあって何人か交代されているが、リスペクトのある継承だった。


物語の展開としては、前作での中心人物のひとりだったフュリオサの幼少期から成人になるまでがじっくりと描かれており、「怒りのデス・ロード」におけるフュリオサの行動心理がより深く理解できる内容になっている。

ただ、前作と比較すればだけれど、本格的なアクションシーンが始まる中盤までは、やや退屈に感じてしまう人もいるかもしれない。

中盤以降は、この映画シリーズの持ち味である凶悪な車やバイクを中心としたとんでもない規模の死闘のシーンがたくさんあり、他の映画やドラマシリーズには滅多にないレベルの視覚的な興奮を味わうことができる。


物語のジャンルをあえて定義すればアクション満載のポストアポカリプスものといえるのだろうけれど、この映画シリーズにはそういった既成の枠組みをやすやすと破壊する超弩級のスケールがある。

黙示録後の世界で (再) 構築され、後の世に語り継がれていく神話とはどういったものか、という創作のテーマが作品に内包されているのだろう。

アポカリプス前の文明の遺産 (車やバイクとガソリン) が確かに存在しながら、荒廃した世界で展開する激動の物語が神話性を帯びていくという強烈なオリジナリティが、多くの映画ファンからこのシリーズが愛される理由のひとつであるように思う。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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