エターナル・サンシャイン | Eternal Sunshine of the Spotless Mind (2004)
4.2/5.0
名作といわれるミュージックビデオやTV-CMを多数手がけてきたミシェル・ゴンドリーの監督作品ということで、監督の持ち味であるシュールなアナログセットを用いた大胆な演出に期待して鑑賞したが、期待通りの画的な驚きを得られて、とても価値のある映画体験だった。
ジャンルで分類すればラブストーリーではあるが、失恋の心の痛みを記憶ごと消去する装置という寓話的なマクガフィンを脚本の軸に用いることで、その記憶 (思考) を断片的に巡るカオスな旅と精神的な苦悩が見事な構成力の画と編集で可視化されており、これはなかなか他の映画監督に真似できない強烈な才能だなとあらためて感じる。
クレイジーな役を演じられることの第一人者といってもいいであろう俳優のジム・キャリーが、この作品では全く冴えない一般的な人間として主演しているが、物語が進んでいくにつれ、なぜ彼がこの映画の主演に抜擢されたのか、それが最適なキャスティングだったのかが分かってくるところがとても面白い。
共演のケイト・ウィンスレットも、奇妙な人物だと自他ともに認められながらも、真実の自分はどんな人物なのかと悩む複雑な人間の内面を高い演技力で表現していて、人間性とは一面的に語れるものではないのだという部分に共感する人も多そう。
監督の奇抜な演出の面白さと俳優達の高い演技力により高いレベルで完成された映画だと感じつつ、個人的には、装置のギミックがない風景的なシーンを手持ちカメラでやや客観的に捉えた画の叙情感が、とても心に沁みた。