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Cinema Review

デューン 砂の惑星 PART2 | Dune: Part Two (2024)



4.4/5.0

フランク・ハーバートによる壮大なSF小説シリーズの映画化作品で、「メッセージ」や「ブレードランナー2049」等のSF映画で重厚な画づくりを形にしたドゥニ・ヴィルヌーヴが脚本・監督を手掛けている。


原作が出版された1960年代から何度も実写作品化が構想されつつ、その世界観があまりにも壮大過ぎることで挫折する製作者が相次ぎ、1984年に初めて実写化を成し遂げた巨匠デヴィッド・リンチですら満足のいく内容には仕上がらなかったと振り返るほどの物語だが、ドゥニ監督による今回の挑戦は、少なくともこの第二部までは成功していると感じる。

登場人物等の設定を中心に様々脚色されていながら、原作が持つ神話のような荘厳さがあり、鑑賞中に思わずSFジャンルの映画であることを忘れてしまうほどの迫力がある。


作品の主な舞台は我々の世界と全く違って見える文明や惑星だが、設定としては我々の文明と地続きでありながらその遥か未来の物語であるというところに、とてもワクワクする。

アーサー・C・クラークが提唱した三法則のひとつ「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」を思い出し、この作品で描かれている世界がまさにそれなのだろうと思う。


舞台となる砂漠の惑星アラキスの描写は、全てのカットが一枚の絵画として成立するような美しさで、それだけでもこの作品を観る価値があると感じるほど。

それに加えて、主演のティモシー・シャラメをはじめ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、クリストファー・ウォーケン、レア・セドゥ、ジョシュ・ブローリン、ステラン・スカルスガルド、フローレンス・ピュー、ハビエル・バルデムといった超一流の俳優達の演技に圧倒される。


ただ、映画としてのとっつきやすさという点においては、作品についての事前知識なしでも多くの人が気軽に楽しめる種類の作品ではないことも間違いない。

SF映画が好きで原作小説も (相当昔に) 読んだことがある私のような人間であっても、細かな世界観設定や作品内独自の様々な名称についての説明が本篇中にほぼ全くないので、いま何がどうなってこういう展開になっているんだったっけと見失ってしまうところが何箇所かあった。

とはいえ、本篇中にあれこれと丁寧な解説が入ると壮大な世界への没入感が削がれてしまうだろうし、映画の作りとしてはこれが正解なのだろう。

ジャンルとしては間違いなくSF映画だが、物語の展開は惑星規模の政治劇が軸になっており、その意味においては大河ドラマに近しい。


「スター・ウォーズ」をはじめとするSFオペラ映画やドラマの製作時に多く参照されたといわれる偉大な原作の世界や物語を、かつてないレベルの凄まじい技術と品質で実写化された作品として鑑賞できることを、映画好きのひとりとしてとても嬉しく思う。

原作小説の全てを映画化しようとすればあと数十年はかかってしまいそうだけれど、ドゥニ監督は続篇の「Part 3」までは手掛けたいと表明しており、製作も決定しているとのことなので、完成を楽しみに待ちたい。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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