ドクター・ストレンジ / マルチバース・オブ・マッドネス | Doctor Strange in the Multiverse of Madness (2022)
- Shoji Taniguchi
- 2月22日
- 読了時間: 3分
3.9/5.0
マーベル・スタジオが製作・展開するマーベル・シネマティック・ユニバース (MCU) に属する映画として28作目にあたる作品で、同ユニバースにおけるヒーローのひとり、ドクター・ストレンジを主人公とする映画シリーズとしては2作目にあたる。
主演はベネディクト・カンバーバッチが続投し、監督は1作目のスコット・デリクソンから「死霊のはらわた」や「スパイダーマン」シリーズ (2002, 2004, 2007の3部作) を手掛けた巨匠サム・ライミに交代している。
映画タイトルにもある通り、今作はMCUにおけるマルチバース (多元宇宙であり並行世界) の設定とその描写が本格的に取り入れられており、「アイアンマン (2008)」から始まったMCUの膨大な作品群を全部観てきたMCUファンにとってはワクワクするものの、そうでない人は「?」という気持ちになってしまうのではと思うシーンがいくつかある。
今作で主人公のドクター・ストレンジと対峙することになるスカーレット・ウィッチという人物の存在も同様で、本篇の中でいちおうの説明はあるものの、これまでのMCU作品を知らない人にとってはその感情や行動の理由を深く理解することが難しいのではないかと感じてしまった。
それはさておき、ホラー分野でカルト的な尊敬を集めるサム・ライミの強烈な個性を味わうという意味では、今作はすごく満足度が高い。
実写映像がグニャ〜と気持ち悪くシフトしたり、複数のショットが次々にモンタージュでレイアウトされたりといった、現代ではあまり使われなくなったクラシックな手法をガンガン用いる編集の数々に、さすがサム・ライミ、これぞサム・ライミ、何も変わっていない! という感動があった。
あらゆるジャンルを飲み込む勢いで拡大するMCUにあっても、さすがに「死霊のはらわた」や「スペル」のようなレベルのゾンビや地獄のような描写はしないだろうと想像していたら、何の躊躇もなかったのではと感じる勢いでその全部をやり切っている (そしてめちゃくちゃ残虐で怖い) というその強烈な作家性に驚き、同時に笑ってしまった。
作品公開時にMCUファンから、スカーレット・ウィッチのキャラクターの描かれ方がこれまでのMCUのそれと違い過ぎるという声があがったが、そもそもサム・ライミ監督は
「自分のやりたいことだけをやる」「(MCUの)これ以前とかこれ以降とかは一切気にしない」とインタビューで公言していたし、仕方がない部分もある。
監督が作りたいものを存分に作っているシーンやショットの撮り方や演出はバキバキに決まっていて、そうではない (MCUの今作以降の展開のために入れる必要があったクリフハンガー要素等の) シーンの撮り方や演出は興味がないのでむちゃくちゃ雑というその落差も含め、MCUファンはこの作品を広い心で楽しめるとより良いのではないかと思う。