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Cinema Review

デモニック | Demonic (2021)



2.7/5.0

「第9地区」「エリジウム」「チャッピー」といったバイオレンスなSFアクションを得意とするニール・ブロムカンプ監督が手掛けたSFホラー。

同監督の作品の中では知名度が低い作品だが、その作風や演出センスが大好きなファンのひとりとしては見逃せず鑑賞した。


絶縁中の母が昏睡状態にあることを知った主人公が、その母が保護されている医療施設を訪れるが、医師たちから「母親の意識とコミュニケーションできる仮想空間に入って母親を現実世界に呼び戻す」ことを依頼されるという、ニール監督らしいSFアプローチの導入。

ただ、その母には壮絶な過去があり、昏睡していることにも驚愕の理由があり… と、SFからオカルトの方向へとジャンルが展開していく。


世界中を巻き込んだ新型コロナ禍の期間に製作された作品ということがあり、ニール監督は今作以前の大規模な製作体制の考え方を大きく変え、限定されたチームスタッフとリソースで今作を完成させたらしく、精緻なVFXや大規模なアクションシーンは抑えられている。

今作では仮想世界の演出に重きが置かれていて、数世代前のコンソールゲーム機が演算していたような粗いポリゴンで構築されているのだが、その歪さや不完全さが仮想世界の非現実感や不気味の表現にもなっていて、個人的には面白いと感じた。

ただ、予算がないから苦し紛れでこんな安っぽいCGにしちゃったの? と感じる人が多いだろうとも思う。


後半では物語が大きく動き出すのだけれど、そこからは凡庸なホラー映画と同じような話の運びになってしまっていて、ブロムカンプ監督ならではともいえる脚本のド派手な暴走と激しい着地を観ることができず、監督のファンとして期待していたこともあり物足りなかった。


ブロムカンプ監督自身が設立した短篇映画製作プロジェクト「オーツスタジオ」での実験的なアプローチの経験を今作に活かしたということらしいけれど、「オーツスタジオ」の短篇達の方が今作よりもずっとワクワクしたなぁと感じてしまったところがやや残念。

監督のファンであることは変わらないので、次はどんな新しい世界を見せてくれるのか期待して待ちたい。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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Kazari
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