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Cinema Review

アトラス | ATLAS (2024)



2.8/5.0

人類に対するAIの反乱が起きた未来、その主導者を捉えるミッションに参加することになったデータアナリストを主人公にしたSFアクション。

NETFLIX映画ということもあり、湯水のごとく製作費が使われたであろうド派手で豪快なVFXによる映像演出が冒頭から終劇までずっと続く。


主演のジェニファー・ロペスは製作も兼任していることもあってか、絶対にこの映画を成功させなければいけないという気合というか製作者の気負いまで演技に表出してしまっているように感じるほどの熱演だった。

本篇中のほとんどの時間がパイロット乗り込み型ロボット (人間の体の大部分が見えなくなる構造) 内の主人公を中心に描かれるため、演者は必然的に大部分を表情で演じる必要があり、約120分の本篇のうち体感で7割ぐらいはドアップ×熱演のジェニファー・ロペスという読後感が残った。

決して大根役者だったりするわけではないのだけれど、とにかくその表情というより顔芸が超豪華なVFXに引けを取らないほどのやかましさで前面に出てくるので、終盤はさすがにやや食傷気味な気持ちになってしまった。

反乱するAIの主導者を演じるシム・リウについては、この作品で得た役どころと役割を忠実に演じていて好感がもてたが、異質な活動体としての個性をもう少しオリジナリティのある演技で表現してくれたらもっと楽しかったのになと感じた。


ここ数年の映画やドラマで取り扱われることが特に多いAIとその反乱というホットトピックを軸に、結末に至るまでそつなくまとめられている脚本だなとは感じたが、予想外で劇的だと感じる展開はほとんどなく、まあそうなりますよねという範囲を逸脱しない無難で安全運転な内容だったことがやや残念。


映像演出の観点だけでいえば、これまで星の数ほど作られてきたロボットが登場する名作映画・ドラマ・アニメの良いところだけをマッシュアップして構成したオールタイムベストのような演出になっていたように感じる。

どこかで見たな、知ってるぞと感じるモチーフやシーンが山盛りだけれど、それが絶え間なく続いて緩急が少ないのでやや退屈してしまうという意味でも、とてもベストアルバム的だ。


この映画より遥かに少ない予算と稚拙なVFX技術で作られた往年のロボット登場系SF映画達の方が、この映画ほどド派手な演出ではなくとも、この映画よりずっと面白かったなと感じてしまい、贅沢な時代になってしまったものだとしみじみ思った。

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Auther:

Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

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