エイリアン: ロムルス | Alien: Romulus (2024)
4.1/5.0
SFホラーの金字塔ともいえる「エイリアン」シリーズのスピンオフ作品で、「ドント・ブリーズ」の脚本・製作・監督を担当し一躍有名になったフェデ・アルバレスが今作の脚本・監督を、同シリーズの1作目を監督したシリーズの生みの親ともいえるリドリー・スコットが製作を担っている。
今作で描かれる出来事の時系列は1作目と2作目の間の22世紀半ばで、スピンオフという位置づけでありながら、1作目から直結する脚本。
人類が地球を飛び出し様々な惑星を開拓していく時代における、植民惑星で生きる若者たちの虐げられた環境からの脱出が物語の起点になっているが、これまでのシリーズでは貨物運搬業や職業軍人、あるいは科学者等の大人達が主要登場人物だったこともあり、シリーズのファンの自分にとっては新鮮に感じられた。
「エイリアン」シリーズの1〜4作目までは作品ごとに監督が代わり、世界観や主人公は共通ながらも、それぞれの監督の個性が強烈に反映された作風になっていてそこが魅力でもあったが、生みの親のリドリー・スコットが監督した前日譚 (「プロメテウス」と「エイリアン: コヴェナント」) では物語の規模と風呂敷が広がり過ぎた印象があって、このシリーズは一体どこへ向かいどのように終着するのだろうという気持ちになってしまっていた。
が、この「ロムルス」は良くも悪くも究極の原点回帰ともいえる内容で、シリーズの中でも特に高く評価する人が多い1作目と2作目の作風をベースに、フェデ・アルバレスによる過去シリーズ全作品へのオマージュが効いた、極めて上質な完全コピーといった作品に仕上がっている。
宇宙船や宇宙施設という閉塞的な限定空間という舞台で、異形の凶悪生物に襲撃されながら立ち向かうというシンプルな物語を、フェデ・アルバレス監督が得意とする極限状況の緊張演出と現代的なスピード感をもってテンポよく描いていて、冒頭から終劇までとても完成度高くまとまっている。
VFXは効果的に活用されながらもそれに頼り切っておらず、実物で製作されたという宇宙船内の美術セットやエイリアンの実在感と重量感は抜群で、映画表現技術が発達した時代においてもVFXと実物とでこれだけ説得力が違ってくるものなのかと驚いた。
70〜80年代のSF映画がそうだったように、宇宙船の外壁や船内のセットの全部には照明を当てず、暗部を漆黒のように沈ませるグレーディングが施されていたが、これは「見えない部分が視界にある」ことで引き起こされる恐怖のトリガーにもなっていて、すごく効果的に感じた。
けれど… 本当に良くも悪くも過去作の優等生的な完全コピーという印象でもあったのが正直なところで、シリーズの1〜4作目をそれぞれ初鑑賞した時のような、作風の大胆な変化や製作者の強烈な個性も観られたらさらに楽しかったな… という気持ちにもなってしまった。
主演のケイリー・スピーニーと助演のデヴィッド・ジョンソンの演技は素晴らしく、それぞれが持つ存在感も個性的で、これから色々な映画やドラマに出演してスターになっていくのではないかと感じた。
特にケイリー・スピーニーは、1〜4作目で主演を務めたシガニー・ウィーバーのカリスマ性との比較から避けられない役目ながら、その瑞々しいオーラと役作りで相当善戦していたと思う。
シリーズのファンにとっては嬉しいというか驚きの人物が中盤から登場するが、その詳細は未鑑賞の方のために伏せる。
今作と同じ体制による次回作の製作が決定しているとのことで、過去作のオマージュから脱却した新規性とシリーズならではの持ち味が両立された映画が鑑賞できることを、期待して待ちたい。