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Cinema Review

最後まで行く | A Hard Day (2014)



3.8/5.0

イ・ソンギュン主演のクライムサスペンス映画で、韓国で製作された今作の評価の高さから、中国・フランス・日本でもリメイクされている。


殺人課の刑事として働く主人公が自動車で人を轢いてしまい、その証拠を咄嗟に隠してしまったことから事態がどんどん悪化していくという導入がとても面白く、無駄がなくテンポがいい脚本と演出もあって惹き込まれる。

常に極限状況にある主人公が、じたばたと機転を利かせながらも切り抜けていくが、次々繰り出される悪知恵が面白い。

その悪知恵がめちゃくちゃに罰当たり過ぎてスリルと笑いが紙一重になるようなカオスなシーンも何度かあり、その高度な演出にも感心する。

主人公の職業を公僕としながら、その人物像を尊敬できるような存在と程遠い設定にすることでこんな展開が作れるという発想に、韓国映画らしいツイストのアイデアが見られる。


序盤では主人公による証拠隠滅が中心になるが、中盤では事件を知る謎の人物からの脅迫があって物語が大きく展開し、終盤ではさらに予測不能な展開があって、割と分かりやすく提示されてきた伏線のスマートな回収もあり、鑑賞していて飽きるタイミングがない。

脚本の面白さだけでなく、俳優達の迫真の演技はもちろん、照明・撮影・編集等の技術もとても高く、韓国映画業界の水準の高さに驚かされる。


これも韓国映画ならではの文化なのかも知れないが、政治や警察組織の腐敗と裏社会との癒着というモチーフが描かれることが多いなという印象がある。

実際の韓国の社会でも (映画ほどではないにせよ) そういった事実があって、国民のフラストレーションもあり、映画を通してそれが描かれることで溜飲を下げているといった側面があるのかも知れない。

現実社会においてそういった腐敗や癒着は当然許されるものではないが、一筋縄ではいかない物語を作り上げるためのモチーフとしてこれほど魅力的なものはなかなかない。

そこには、正義もしくは悪といった二元論では割り切れない、人間の内面の複雑性を描く材料がたくさんあるからだろう。

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Shoji Taniguchi | 谷口 昇司

Creative Director

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美術大学にて映像を中心に学び

現在はマーケティング業界で働き中

映画やドラマを観ている時間が幸せ

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